足場を利用する前に押さえておきたい労働安全衛生法
足場のTIPS
足場を利用する前に押さえておきたい労働安全衛生法
足場を利用する際には安全を考慮し様々な注意が必要です。
高所作業をスムーズにするくさび緊結式足場や単管足場、枠組足場はとても便利な一方で、高所作業中の足場からの転落事故など気をつけなければいけないポイントがあります。
実際の死亡事故の発生状況を厚生労働省が発表している「労働災害発生状況(令和2年版)」のデータで見てみると、労働災害による死亡者数は802人で、足場などにおける墜落・転落が全体の約26.1%で最も多くの割合を占めています。
そのような事故を減らそうと、労働安全衛生法で安全措置が設けられています。
労働安全衛生法ってどんな法律?
労働安全衛生法は「職場における労働者の安全と健康を確保」するとともに、「快適な職場環境を形成する」目的で制定された法律です。
1972年(昭和47年)に労働基準法第5章から分離・独立して作られました。
労働者の「安全と健康の確保」と「職場環境の形成・促進」を目的とした法律で、それらを推進する手段として「労働災害の防止のための危害防止基準の確立」、「責任体制の明確化」、「自主的活動の促進の措置」など総合的、計画的な安全衛生対策が挙げられています。
現場監督や足場で作業される方は押さえておきましょう。
足場に関する労働安全衛生法
第五百五十九条 (材料等)
事業者は、足場の材料については、著しい損傷、変形又は腐食のあるものを使用してはならない。
2 事業者は、足場に使用する木材については、強度上の著しい欠点となる割れ、虫食い、節、繊維の傾斜等がなく、かつ、木皮を取り除いたものでなければ、使用してはならない。
簡単に要約すると、「使用する足場設備や材料には細心の注意を払い、丈夫で安全なものを使いましょう」という条項です。
例文に表記されている通り、足場に「損傷・変形・腐食」があれば、それを原因に足場が崩れるなど、作業員が足場から転落することが考えられます。木皮も付いたままだと、滑って足場から転落する恐れがあります。
事業者はしっかり確認を行い、足場組立前、また足場作業開始前にこのような安全への取り組みを実施する必要があります。 第五百六十三条(作業床)※一部抜粋
事業者は、足場(一側足場を除く。第三号において同じ。)における高さ二メートル以上の作業場所には、次に定めるところにより、作業床を設けなければならない。
二 つり足場の場合を除き、幅、床材間の隙間及び床材と建地との隙間は、次に定めるところによること。
イ 幅は、四十センチメートル以上とすること。
ロ 床材間の隙間は、三センチメートル以下とすること。
ハ 床材と建地との隙間は、十二センチメートル未満とすること。
五 つり足場の場合を除き、床材は、転位し、又は脱落しないように二以上の支持物に取り付けること。
六 作業のため物体が落下することにより、労働者に危険を及ぼすおそれのあるときは、高さ十センチメートル以上の幅木、メッシュシート若しくは防網又はこれらと同等以上の機能を有する設備(以下幅木等」という。)を設けること。
6 労働者は、第三項の場合において、要求性能墜落制止用器具の使用を命じられたときは、これを使用しなければならない。
当条項では以下のようなルールが明記されています。
- 2mを超える高所で一側足場以外の足場を組む場合
- (イ) 足場は40cm以上の幅を取ること。
(ロ) 足場の床材間の隙間は、3cm以下にすること。
(ハ) 床材と建地の隙間は、12cm未満とすること。 - 移動式足場の場合を除いて、1か所に固定して足場を組む枠組足場の場合
- 床材が崩壊しないための足場安全策として、2つ以上の支持物を足場に取り付けて下さい。
- 落下の恐れがある足場の場合
- 機材や工具の落下防止対策として、高さ10cm以上の幅木や、メッシュシート、防網を足場に使用してください。
第五百六十四条
事業者は、つり足場、張出し足場又は高さが二メートル以上の構造の足場の組立て、解体又は変更の作業を行うときは、次の措置を講じなければならない。
一 組立て、解体又は変更の時期、範囲及び順序を当該作業に従事する労働者に周知させること。
二 組立て、解体又は変更の作業を行う区域内には、関係労働者以外の労働者の立入りを禁止すること。
三 強風、大雨、大雪等の悪天候のため、作業の実施について危険が予想されるときは、作業を中止すること。
四 足場材の緊結、取り外し、受渡し等の作業にあつては、墜落による労働者の危険を防止するため、次の措置を講ずること。
イ 幅四十センチメートル以上の作業床を設けること。ただし、当該作業床を設けることが困難なときは、この限りでない。
ロ 要求性能墜落制止用器具を安全に取り付けるための設備等を設け、かつ、労働者に要求性能墜落制止用器具を使用させる措置を講ずること。ただし、当該措置と同等以上の効果を有する措置を講じたときは、この限りでない。
五 材料、器具、工具等を上げ、又は下ろすときは、つり綱、つり袋等を労働者に使用させること。ただし、これらの物の落下により労働者に危険を及ぼすおそれがないときは、この限りでない。
2 労働者は、前項第四号に規定する作業を行う場合において要求性能墜落制止用器具の使用を命ぜられたときは、これを使用しなければならない。
当条項は、平成27年に大改正が行われたので、最新の情報を把握できていなかたは、認識を誤っていたり、もしかしたら落とし穴があるかもしれないので、改めて2m以上の足場組立てや足場解体、足場変更作業を行うとき以下のルールを徹底しましょう。
(一)「いつ」、「どこで」、「どういう風に進めるか」を作業者全員に周知させる。
(二)作業の区域内には、作業員以外は立入り禁止にする。
(三)悪天候で危険と思えば、すぐ作業を中止しましょう。
(四)緊結、取り外し、受渡し時は墜落を防止するため、下のルールを守りましょう。
(イ)困難時以外は、幅40cm以上の作業床を設置する。
(ロ)要求性能墜落制止用器具を取り付ける。
(五)材料、器具、工具等を上げ下げする時は、つり綱、つり袋等を使用させること。
(2)落下防止の為にも、作業者は要求性能墜落制止用器具の使用を命じられたら使用しましょう。
その他にも関連条項があるので、しっかりと確認しておきましょう。 第五百六十五条(足場の組立て等作業主任者の選任)
事業者は、令第六条第十五号の足場作業については、足場の組立て等作業主任者技能講習を修了した者のうちから、足場の組立て等作業主任者を選任しなければならない。第五百六十六条(足場の組立て等作業主任者の職務)
事業者は、足場の組立て等作業主任者に、次の事項を行わせなければならない。ただし、足場解体の作業のときは、第一号の規定は、適用しない。
一 材料の欠点の有無を点検し、不良品を取り除くこと。
二 器具、工具、要求性能墜落制止用器具及び保護帽の機能を点検し、不良品を取り除くこと。
三 作業の方法及び労働者の配置を決定し、作業の進行状況を監視すること。
四 要求性能墜落制止用器具及び保護帽の使用状況を監視すること。
「足場の組立て等作業主任者技能講習」について
冒頭でもご紹介したとおり、労働災害のなかで足場からの転落事故の割合は最も多く、厚生労働省は事故を少しでも減らそうと、平成29年7月1日に「足場の組立て等作業主任者技能講習」を新設し運用しはじめました。
「足場の組立て等作業主任者技能講習」を終了しないと現場での指揮をとれないため、足場を組み立てる際に必ず必要な資格です。 第五百六十七条(点検)
事業者は、足場(つり足場を除く。)における足場作業を行うときは、その日の足場作業を開始する前に、足場作業を行う箇所に設けた足場用墜落防止設備の取り外し及び脱落の有無について点検し、異常を認めたときは、直ちに補修しなければならない。
2 事業者は、強風、大雨、大雪等の悪天候若しくは中震以上の地震又は足場の組立て、一部解体若しくは変更の後において、足場における作業を行うときは、作業を開始する前に、次の事項について、点検し、異常を認めたときは、直ちに補修しなければならない。
一 床材の損傷、取付け及び掛渡しの状態
二 建地、布、腕木等の緊結部、接続部及び取付部の緩みの状態
三 緊結材及び緊結金具の損傷及び腐食の状態 四 足場用墜落防止設備の取り外し及び脱落の有無
五 幅木等の取付状態及び取り外しの有無
六 脚部の沈下及び滑動の状態
七 筋かい、控え、壁つなぎ等の補強材の取付状態及び取り外しの有無
八 建地、布及び腕木の損傷の有無
九 突りようとつり索との取付部の状態及びつり装置の歯止めの機能
3 事業者は、前項の点検を行つたときは、次の事項を記録し、足場を使用する作業を行う仕事が終了するまでの間、これを保存しなければならない。
一 当該点検の結果
二 前号の結果に基づいて補修等の措置を講じた場合にあつては、当該措置の内容
まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回は、労働安全衛生法について詳しくご紹介いたしました。労働安全衛生法に基づいた事業者向けの技能講習を厚生労働省が実施しております。ご興味のある足場業者様は、お近くの労働局にお問い合わせください。
ASNOVA編集部からのコメント
厚生労働省が発表している労働災害発生状況について、労働安全衛生法が作られた昭和47年に比べると労働災害での死亡者数は4分の1以下に減っています。安全性にも最新の注意を払うよう、各足場業者様も日々改善をされていると思います。職人の命を守ることも、事業者として大切な仕事です!
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